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2006.01.13

『妖術記』河野多惠子、角川ホラー文庫

 妖術で人を殺すことができる女の話。超能力というような華やかな感じはしない。じっと粘り、冷静に対象者を観察しながら念じ続ける。蝋人形を作るほうが、対象が具体的に見えてくるため、楽なのかもしれない。自らの汗を筆で拭い取り、重ねた半紙の上で、男の顔面の輪郭を描き続ける女の描写がつづく。
 女が念じ殺す対象にしたのは、彼女の仕事への斡旋を二つ返事で引き受けておきながら、簡単にその約束を反故にしたある官庁の<頤男>である。もちろん殺すに足る理由があるわけでもないが、殺されない理由も存在しない。たまたま、見初めただけである。
 混じり気がない「悪」をどうやって表現するのか、という問いに対して、小説を書き世に認められようと苦しんでいる女という主人公を持ち出し、作者は挑んでいる。最後には、主人公と作者の関係も交錯する。
 「東京という大都会は自分の仕事にとって、何とうってつけの環境であることか、とわたしは思ったものであった」

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