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2006.02.25

『日本の幼稚園』上笙一郎 山崎朋子、ちくま学芸文庫

 日本の幼稚園の歴史の通史である。1965年が親本刊行年だから、40年以上前の本なのにまったくもって面白い。とにかく丁寧に書かれている。「幼児教育の歴史」という副題がついていて、通史を厳密に追いかけるよりは、あるべき幼児教育とは何なのかを、現場の実践例に即して考えている。執筆当時にヒアリングを行った人々は、疾うに鬼籍に入っているだろうから、二人の仕事は、記録という意味だけでも大変なもんだ。
 これは著者の(当時の)思想的な状況とも関係があるけれど、大きな状況との連関で、幼稚園の歴史が語られる。つまり、官主導で行われた幼稚園の運営が、本当に「一般大衆」のためになったのか、という点に著者の思いがあらわれる。それぞれの章で、各実践者の取組みを両義的に考えているものの、全般的な流れは、政府に対する要求を続けていかねばならないというトーンでまとめあげられている。
 それはそれとして置いておくとしても、この文脈の中で落ちこぼれる事例も果敢に拾っているのが、たくましい。たとえば「精薄児」や「混血児」、そして、夜の職業を持つ母親の子どもたちに対する幼稚園、保育所の事例。彼らに対する著者の視点は、政府への要求をすっぱり書いているところより、はるかに情緒的で迷いが見られる。これが、とてもいいと思う。この本が世に出された40年間で、本当に変わらなかったのは、こういった陽の当たらない世界で生きる子どもたちをめぐる問題だろう。
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