--.--.--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2005.12.30

『苦の世界』宇野浩二、岩波文庫

 身につまされるところが多すぎて、苦しいことこの上ない。生きることは苦しいことである云々の人生訓レベルであればいいけど、問題は総論でなく、各論なのだ。ここがこのように苦しいが、その理由は背景にこの苦しみがあるからだ、という論旨展開は、いやあ苦しい。当時の読者はどう読んだのか。
 ヒステリーの内縁の妻にかしづきながら、無職で宿無しで半端な年齢で偽名を使い生活している小心者で禿頭の主人公が、友人宅に居候しながらようよう生きながらえる話である。本当にいやだなあ、こんな話。
 圧巻なのは、浅草の花屋敷(現在の花やしきの前身)に、倒産した零細出版社の元社長と、父親に愛人の芸者を寝取られた浪人学生と主人公の三人組が出かけるシーン。園の目玉として見物客に供せられているカワウソに、一缶につき六銭出してドジョウの餌をやる。カワウソは餌をやるごとに律儀に餌を食べにくる。
 餌をやってもやっても、やるごとにカワウソはドジョウをパクつきにくる。調子に乗ってどんどん餌をやる。小銭がなくなったら、適当に十銭玉でも代金箱に投げ入れる。餌がなくなったら、別の動物用の餌を投げ入れる。それでもカワウソは食べにくる。しまいにカワウソは食べきれなくなってふて寝する。三人は笑う「わはははは。」「わはははは。」見物人も笑う。「わはははは。」「わはははは。」見つけた花屋敷の職員が駆け寄り怒鳴りつける。しかし、この職員も実は大変な苦労人なのだ。
 もう各論で勝負するしかない、総論を見誤るとしても。
この記事へのトラックバックURL
http://watwatwat.blog34.fc2.com/tb.php/14-e1bee60f
この記事へのトラックバック
この記事へのコメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
Posted by at 2006.01.05 01:15 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。