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2005.11.08

『蕭々館日録』久世光彦、中公文庫

0002.jpg 大正文壇を舞台にした小説。主人公である小説家の狭苦しい本郷弥生町の住処に蝟集する人びとの様子を五歳の女の子・麗子が追う。
 モデルは「児島」が小島政二郎、「九鬼」が芥川龍之介、「蒲池」は菊池寛。中央公論の新人編集者としてその無知浅学を弄ばれる「雪平」は、若き日の嶋中雄作ではないか。また、やたら衒学的な会話を仕掛け人を煙に巻く「迷々」は平野謙の父、文芸評論家の平野柏蔭か。
 嫉妬や羨望が入り混じる文壇にあって、一つのサンクチュアリとして成立した蕭々館。この中でも全員から畏敬の念を持って迎えられていた九鬼に描写の多くが割かれている。しぜん作家仲間として折り合おうとする仲間は、岡本かの子をはじめとする女性遍歴など九鬼のプライベートな部分に触ろうとしない、触れない。彼の小説や評論作品にでなく、そこにこそ彼の生があるはずなのは知っているが、届かないのだ。
 そこに子どもながらの狡猾さと無邪気さで触っていくのは、児島の娘・麗子である。蕭々館の納戸で眠る九鬼の寝顔に麗子は語る。「今夜、あたしは、あなたの五歳の母でした」と。
 文章書きを生業にした近代人に潜む漆黒に材をとった、こわい話である。
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