--.--.--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2009.11.09

『高丘親王航海記』澁澤龍彦、文春文庫

 残された小説が少ないものの傑作だらけなため、言及されつくした感もある著者の小説作品群。その中でも主著と目されるこの奇想小説に関して、文芸評論家の奥野健男は「ブキッシュな厳密な考証に耐えると共に、現代の風刺になっているだけでなく、実におどろくべきことだが」――ここからが重要なのだが「作者の身心の表白にもなっていることだ」と指摘する。
 時は貞観七年、西暦に直しても仕方ないが、867年。天竺へ上ることを夢みた高丘親王は、還暦をとうに過ぎながらも宿願を果たすべく、広州の港を出た。おんなの顔を持つ鳥や、獏肉を乞う姫君など、あまたの椿事に遭遇する一行。
 お供は果敢に道を探るが、親王はどこか他人事然としているか、呆然としている場面が多い。夢の中の天竺に近づいている感覚もない。「なにを求めているのか、なにをさがしているのか、自分でもよく分らない」。同時に、探していたものと出会ったときの既視感をも予期している。「ああ、やっぱりそうだったのか。すべてはこの一言の中に吸収されてしまいそうな予感がした」。それは濃厚な死の予感。1987年に連載終了。同年、著者逝去。

この記事へのトラックバックURL
http://watwatwat.blog34.fc2.com/tb.php/50-e394f7f8
この記事へのトラックバック
この記事へのコメント
管理者にだけ表示を許可する
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。