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2005.11.23

『優しい人々』坂上弘、講談社文庫

 撞着語法(オクシモロン)という言葉を思い出した。その方面には、まったく明るくないのだが、修辞学で使う専門用語で「熱い氷」「輝く闇」といった言葉が一例になる。辻褄の合わなさを包含した人間像をイメージして、著者はこの書名を付けたのか。つまり見方によっては、優しい人が全然出てこない小説でもあるということだ。
 兄夫婦が交通事故に遭い、兄の介護に一族ごと巻き込まれる主人公の男性。幼少期以後の家族との行き違い、会社での瑣末な人間関係、愛人との密会の日々が、事故をきっかけに、手持ちのゲームカードをすべて開けたようにせまる。
 ストーリーは単純である。主人公の心理描写が延々と続いていくのだ。そういうタイプの作品なのだ。
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